第786回 突厥斯坦考

何も触れないのもおかしいので書く。個人的な考えだ。

中国には感謝してる。けだし本邦精神文化の表層を象る重要事項の貸主だからだ。

漢字や仏教を紹介してくれた。また原始日本の民族精神に孟孔老荘を貸し与え、或いは大陸を舞台に活躍した英雄伝説を通じ仁義礼智忠臣孝悌や勇を武士道や、独自に発展させて来たとはいうものの、ここ1500年の対人関係に大いに採り入れ活用させて頂いてきたところである。

僕は20年前、某メーカーに勤めていた時、生まれて初めて中国人に会った。留学生だった。

たまたま僕が持っていたのが文庫版の「大学」か「中庸」だったかを本物の中国発音で聞いてみたいと思い彼に差し出した。
彼は全くチンプンカンプンだった。繁体字が読めないだけではなく皆目意味が取れなかった。
僕よりも格段に頭のいい奴だったので驚いた。確かに僕らでも源氏物語を突然出されたら困るだろう。でも学校であれだけ仕込まれたんだから、何なと周辺の話ぐらいはできる。
彼はこういうのは習わないとはっきり言った。ガッカリしたのを覚えてる。

僕の中国通の大倭人の友人 − きっと中共公安の狗の諸君らも見とるだろうから彼に迷惑かかってはならんので名は伏せる − に、国際社会や内政での中共政府のあり得べからざる立ち居振る舞いや、衝撃的な商業道徳の欠如等を聞くにおよび

「それら行為が本邦精神の源泉となった英雄や聖賢の末裔の所業か?」と聞いた。

すると彼は

「お前ぇさ憧れどる英雄や聖賢はよぉ、全部ぅ文化大革命と大躍進でみんな殺されづまっで、穴凹の中さ埋ずめられどるだでよぉ、んでもって、残ごっだのはカスばーがりでぇ、今の頭のええ奴らも人倫のカゲラもねぇがら、そっだらごと今の中国人に求めではなんねぇ」

と言った(彼の出身地を秘匿するため発言を標準的田舎弁にした)。
古の中国と完全に断絶していると言うのだ。知らんかった。

昨年、縁あって新疆ウイグル自治区省都ウルムチに遊んだ。
言い直す。中共に侵略されている東トルキスタン共和国の街、ウルムチだ。

僕の初めての大陸行が西域であるというのも何か不思議な気がするんだが、憧れの西域で沢山の文物や現地人を見た。
イスラムのモスクにほど近いバザールで見たウイグル人のエリアは、洋の東西、新旧、善悪、芳匂悪臭が入り混じり混沌としていた。

ウイグル人の歓待で、ウルムチウイグル料理を食わせる割りと高級な店で、民族音楽家の奏でる弦楽器を聞きながら、羊料理の数々を平らげた。西域で味わうアラビアンナイトな宴に酔うた。

突然、関係無い隣の宴会に出ていたという地域の中国共産党のエライさんらしい漢人が、かつて日本に行ったことがあるとかでこちらの宴会に挨拶に来た。
彼は円卓の一席に座り、弦楽器を止めさせて独り、話をし出した。
中共高官演説風の糞面白くなさそな話を、妙な抑揚を付けて脂ぎった漢人オヤジが喋る。面白い訳がない。
僕は夢にまで見た西の国、シルクロードの風情に酔いしれて居たので、いい気になって延々と話続ける空気の読めないKYオヤジに殺意すら覚えた。

席は完全に白け、彼は20分ほど話しただろうか。
僕は酔って居た。このオヤジはバカだ。客を完全に離している。
人の気持ちを読む回路が完全に欠如破綻している。個人的な問題か社会の問題か?

ワシの貧乏揺すりが始まる。通訳をしてくれていた友人が表情で僕をいさめる。
ホストのウイグル人夫妻がすまなさそうな顔で笑みを返す。
しかし驚くべきことにその宴主のウイグル人は、僕から目をこの珍客に転じると、下らん(であろう)話をまるで校長先生の講話を聞くように静かに薄笑いを浮かべて聞くのである。

神妙な素振りだが内心「しっかたねえなぁ」という諦めみたいなものがビンビン感じられる。

恐らく日本なら「お前!何様のつもりだ!いつまでしゃべっとんねん!」と大喧嘩になるであろう。気分が悪い。

歪な珍客に中断された宴会は、皆と握手をしてバカ者が出ていった後、何事もなかったように音楽を再開した。
糞面白くなかったが、互いの健康を祈って乾杯乾杯また乾杯。
杯を干して、干し返して十数合、陽気な宴に復帰した。

はてさて、地元の酒にしたたかに酔うた僕は嬉しさで、街に出て、難波心斎橋や梅田堂山町でいつもオラブように月に向かって咆哮した。

「ウォーッ」

突如周りに居たウイグル人たちは慌て僕を押さえ込み黙らせた。
曰く「武装警察にハチの巣にされるぞ!」、「公安に捕らわれて日本に帰れなくなる!」と。

北京五輪を控えていた当時、中央政府少数民族の動向に神経を尖らせていた。
ウイグル人たちの海外渡航は厳しく制限され、彼らは様々な集会に密偵が放たれ、盗聴が公然と行われている、と小声で話した。
その上で離反できぬようにウイグル人たちを一定のランクまでは当用するが、それ以上は出世をさせないで主要ポストは全て漢民族が押さえる人事を取る。
謂わば民族内の分断だ。

元々が遊牧民だから割りとまとまりにくく統一的動きを取ることがない。
漢民族の移民が圧倒的に増え、ウイグル人自体の人口比率が低下している。
一人っ子政策が厳格に遵守されているという。減らすために。

支配と被支配の関係。はじめて見た。

元々は東トルキスタンとして独立国を形成しようとした誇り高い民族である。
その夜のホストは(迷惑がかかるといかんので詳細は避けるが)、いい奴だった。ホテルの部屋でトマトを肴にキャーキャー言うて飲んだ。

僕はホテルの部屋で、喉元まで出掛かった一言を言い出せずに帰国した。
言いたかった。

「(諸君の東トルキスタン国旗の色である)水色の巾を締めて革命を興せよ」と。

近時、外信で東トルキスタンで暴動発生と聞いた。あのバザールの近辺だと言う。

日本はマスコミが中共に金玉を完全に握られているので、恐らくはこの東トルキスタン紛争を中国の国内問題として軽く報じるであろう。
また情弱がターゲットのテレビは、その最期の使命として、彼らの意を受けて、(どことは言わん)亡国政党に政権を取らせるであろう。その向こうにあるのは、中共の狗が内部侵略を進めるために進める、外国人参政権の推進である。
今回マニュフェストからは外したがな。

スノッブが吐く「一遍、やらしてみたらええねん」という言葉はウルムチのホテルの自室でほたえ倒して飲んだウイグルの友人の憂いを、我々と共通のものにする。

北京五輪前から彼らは言っていた。必ず近い将来に惨劇が起こると。
150人余が死んだという。
おそらく1500人または15000人がミンチにされていることだろう。

今、西域の友人に思いを致す。だが決して他国の問題ではない。
2050年には日本は中国のもの、と言い放った中共高官の言、日本に在する中国人の多さ。
友愛などという言葉は乙女の日記にひっそりと書いておけ。
今、日本は元寇の前夜、東トルキスタンチベットへの道すがらであることを国民すべからく思い知れ。

ウイグル人張角よ起きよ。ウルムチのロレンスを待望する。
運動を支援する金もない。生活にまみれて時間もない。
彼らを支援する方法はここに書くことしかない不甲斐なさよ。

この日記はおそらく何らかの勢力により大混乱となるか削除されることであろう。
コメント(0)も悲しいがな。