第304回 サイン

 昨日の朝、スキンヘッド、六十歳男性、眼鏡、ジャージ、ほろ醉ひ。
 四ツ橋線花園町の驛付近列車内にて突然隣りから
 「いいか、算數なら分數が一番の基本だ。分數のできない奴は何にもできねえ。いいか、すべての基本は分數だ。よく覺えとけ!」
 目を見て言はれた。僕は下腹に力を入れて深呼吸して
 「ありがたうつ」と返した。
 毆られるのかと思つた。彼はニッコリ笑つて大國町で降りた。
 
 昨日の夕、列車が近鐵布施驛に到着したとき、向かひのシートに座つてゐた20代前半男性(ずつと獨り言)が、つかつかつかと私の眞ん前にきて、顔を十五センチほどにまで近付けて
 「ふ、布施つ!」と叫んだ。
 僕は下腹に力を入れて深呼吸して
 「ありがたうつ」と返した。
 毆られるのかと思つた。彼はニッコリ笑つて布施で降りた。
 
 神は私に何かを示して下さつてゐるのだらうか。算數の基本と現在の停車驛の再認識。何の徴なのか?何の意味なのか?わからん。
 或いは社會が少しく病んでゐるかのやうにも見える。ただ病んでゐるのが、僕か相手方かは不明だ。
 
【陣中日誌】
朝、
晝、ラーメン麺固泥濃(みーちやん食堂)。
夜、燒きそば、ビール等。