第212回 斬つても斬れぬ

 伏見の物件を見に行つた。半日掛りとなつた。遠いね、京都は(向うも思てるわな)。
 夕方、歸りは近鐵の奈良線沿線で落ちるといふ手もあつたんだが、JR宇治驛で車を止めて降ろして貰つた。
 「今日の定例は京都ですな」
 良則君が窓越しに叫んだ。
 「あゝ、立飮みを探すよ」
 「ご同道は?」
 間髮入れず聞いてくる。
 「僕の仲人親の息子さんだ」
 「なるほど一八さんですな」
 なんでもよく知つてゐる。
 「君も來るか?車賣り飛ばして」
 「この車もう少し乘りますわ。では明日」
 「あゝ」
 京都に着きしばらくして兄さんと出會ふ。安げな赤い提燈を求めて京都驛南邊りを徘徊。
 兄さんは生、僕は酒。 兄さんは餘りアルコールが進むと、アイムソーハッピーを叫んで菊の花を食べ散らかし見知らぬエレベータの前で大の字に昇天、靴はゴミ箱に棄てられ、後で皆で探し倒さなければならぬ酒癖をお持ちでいらつしやる猛者なんで、ほど/\に去ぬ。
 昨日の夜の出來事だ。
 
【陣中日誌兼戰鬪詳報】
朝、ミスタードーナツアメリカンコーシ。
晝、丸龜製麺カレーうどん大と野菜かき揚げ、竹輪揚げ。
夜、自宅にて、赤ワイン半瓶、アゲと小松菜の炊いたん、惣菜のトリカラ、コロッケ、海苔、飯二杯。