第203回 竹の子掘り

 福地の山に登り、谷を下り、斜面で竹の子の頭を見つけては掘る。
 昔ならば何と言ふこともなかつたこの行ひも、今では汗だくのゼー/\言ひである。加へて僕は昔から目が疎い。僕にとつて藪の下草の中から竹の子の頭部分を探し出すのは至難の技だ。見えないんだ。
 しかし、だ。
 たま/\連れて行つてゐた下の娘まつ梨號(3)が想像を超えて役に立つたのだ。三歳兒だから野營訓練の特別な教育も施しては居らぬし、竹の子掘りなんて彼女にとつても初めての經驗のはず。竹の子の性質も特徴も何も説明してゐないにもかゝはらず、
 「こゝ!」「あつたよー」「父ちやん、コレー」
 まー、見つけるわ、見つけるわ。それも頭だけをちよこつと出したゞけの、馬鹿でかくない、刺身でも食へさうな頃加減なヤツを見つけて來るわ、來るわ。
 僕は娘に言はれるがまゝに竹の子を傷つけぬやう山を穿つ作業を繰り返しながら、彼女の才能に氣付き始めてゐた。親バカではない。まじめにこいつは竹の子探しの天才ではないか。
 否、反對に「竹側の立場」で言ふと、新世紀初頭に舞ひ降りた新生兒の大量殺戮王ヘロデの再來である。
 小振りの可愛い竹の子が大量に取れた。食ふぞぉ。(←眞のヘロデは僕かも知れぬ)
 
【陣中日誌兼戰鬪詳報】
朝、中華鬻と餃子。
晝、榛原の福地あたりの中華屋であんかけ燒きそば。あそかうまいね。
夜、天神橋で燒鳥吉鳥。