第164回 春の行樂のお供に混ぜご飯お握りを考へておられる貴方に!

 春が來た。行樂のお供にはチラシ壽司、菜飯やゆかり飯のお握り。また普段使ひには、卵ご飯や納豆ご飯。
 過日「飯の食ひ方分類」を書いたが、甲第二類である「混ぜご飯」に關してはこの時期が來たら書いておかなければなるまい。
 先づ混ぜ物の含有量が度を超えぬこと。先日の「びんちようマグロ丼」の囘の卵みたいに、ゆかりなんかゞ多すぎると辛くて食へぬ。また混ざりが均一なること、これは重要。稀薄な層を發見すると貧しい氣持ちで一杯になる。しかし餘りに均一化を圖らんとして混ぜに混ぜて飯粒を潰すやうなことがあつてはならぬ。混ぜるなら熱々の炊きたてに混ぜないと冷や飯では混ざらんしチンしても無理だ。心は本和嘉仕込みの「炊きたての飯空氣入れ斜めシャモジ捌き」の要領と言へば解りやすいか。
 さて混ぜ物側の注意點として水氣の問題がある。卵や納豆などは別として、菜飯の際のアゲやチラシのカンピョウ、高野豆腐などには充分注意して呉給へ。具材の作り方によつては、お握りなんかを握ると汁がこぼれるやうなことも時折見受けられるが、折角硬めに炊いた飯がグチャグチャになつて、ちよつと違ふ物になる。悲しい。
 最後に腹が減つてゐる時に、この「混ぜご飯」を作つてはならぬ。すごく攻めの氣持ちで大量の飯や具材を使用して食ひ切れぬ量のそれができてしまふだらうからだ。
 これらに注意して、飯食ひたちよ、飯を攜へ野に散開せよ。
 
【陣中日誌兼戰鬪詳報】朝、拔き。晝、來來亭の牛レバー定食(ラーメン[背油濃い目、チャーシュー柔らかい目、面硬め]、牛レバー唐アゲ、ライス小)。